研究分野紹介

分子情報薬理学

スタッフ

准教授:小川 和宏

研究の概要

1.生体防御機能を持つヘム分解系酵素:ヘムオキシゲナーゼ(HO)

ヘムは酸素を運搬するヘモグロビンや薬物代謝酵素チトクロームP-450などのヘムタンパク質の構成成分として,我々の生命維持に必須であり,生体内で合成および分解されている。しかし,過剰の遊離ヘム(タンパク質と結合せず単独で存在するヘム)は活性酸素を産生し毒性が強い。
遊離ヘムは,ヘム分解酵素の誘導性アイソザイムであるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)を強く誘導し(酵素の発現量が増え),速やかに分解されてビリルビンが生じるが,ビリルビンには抗酸化作用があり,生体防御作用を発揮する。
HO-1の発現誘導は,炎症の抑制,循環器・呼吸器疾患の予防,出血や虚血の際のダメージ軽減など,種々の疾患の治療や予防に役立つことが知られている。
小川らは,このHO-1の発現調節などを長年研究している。

2.高等生物のヘム結合性・ヘム調節性転写因子の世界初の同定

小川らは,HOの基質ヘムが転写抑制因子Bach1に直接結合することでBach1のDNA結合を阻害して,脱抑制によりHO-1の転写を誘導するという,ヘムによる転写誘導メカニズムを解明した(EMBO J, 20, 2835-2843 (2001))。これは,存在が想定されながら長年不明であった,高等生物のヘム結合性・ヘム調節性転写因子の世界初の同定であり,241回引用されている(2015年11月時点)。
この他,低酸素によるHO-1や構成型アイソザイムHO-2の調節とその意義などについても解析を行っている(J Biol Chem, 278, 9125-9133 (2003)など)。

3.生体防御機能を持つ医薬や食品成分の開発,特許権取得

上記1や2のヘム分解系の調節物質を中心に,生体防御機能を持つ医薬や食品成分の探索も行い,実用化を視野に特許権取得を進めている。
2012年には小川単独による発明「ヘムオキシゲナーゼ-1誘導剤」で,2014年には小川ら3名による発明「原虫感染症の治療又は予防薬」で,それぞれ小川が単独の特許権者として特許権を取得した(特許第5062544号,特許第5505679号,図はこれらの特許証)。
これらの特許審査や特許審判における特許庁審査官とのやり取りなどの手続き(反論書や補正書等の作成・提出など)は,弁理士に依頼せずに全て小川自身が行って特許権を取得しており,こうした特許に関する研究教育も本研究室において可能である。

特許証