研究科・学類紹介

学類長挨拶

ご挨拶

医薬保健学域医学類長 杉山 和久

金沢大学医学類は150年以上に及ぶ日本で屈指の長い歴史を有する医学校です。旧帝国大学に次いで、医学専門学校から大学に昇格したのは全国で6校(旧制6医大:金沢、新潟、千葉、岡山、長崎、熊本)で、大正12年(1923年)4月に旧制金沢医科大学となり、その初代学長が、高安病を発見した高安右人教授(眼科学)であります。今までに国内外で活躍する多くの優秀な卒業生を輩出した、この伝統ある金沢大学医学類に入学し、医学を学ぶ学生諸君は誠に幸運と思います。
金沢大学医学類の教育理念は「人類の健康・福祉に貢献できる人間性と総合的な能力を有する医療人・医学者の育成を図る」ことです。医学類においては、知識及び技能の習得はもとより、医療・研究に対しての倫理観とプロとしての自覚、コミュニュケーション能力の開発、そして、危険・事故を予防する能力を高めていけるように、教育に配慮しています。この中で,学生の段階から医学研究の面白さや大切さを学び,優れた医学研究者となる礎を築くMRT(Medical Research Training)プログラムなど特色あるカリキュラムも充実しています。さらに,留学,臨床実習など海外の大学への学生派遣,海外医学生の医学類への受け入れなど学生交流プログラムも着実に成果をあげています。このような教育環境の一層の整備と醸成を円滑に進め,国内ならびに国際的な交流,連携を通じて,世界の医学・生命科学・医療をリードしうる豊かな医師,医学研究者の育成を一層目指して行きたいと考えています。
今日の医学教育の礎を築いたオスラー博士(平静の心―オスラー博士講演集)は医師がそなえるべき資質として、冷静・沈着であれ、どんな事態にあってもあわてないために幅広い経験と知識を身につけよ、娯楽や快楽にのめりこまず、常に謙虚であれ等々を強調しています。いかに医療技術が革新的な進歩を遂げたとしても、医師と患者の関係、そして医師と他の医療職との関係は、人間同士の関係であり、時代を超えて重要なテーマです。是非、オスラー博士の「平静の心」を読むことをお薦めします。また、医学類に入り、自分はなぜ医師という職業を選んだのか、そして医師とはどのように在るべきなのかという悩みを抱える医学生は多いと思います。2002年4月の朝日新聞朝刊「私の視点」に、金沢大学附属病院長であられた河﨑一夫先生は「医学を選んだ君に問う」という論説を提示されました。河﨑先生は私の先代の教授であり、現在の眼科教授である私は、この論説を常に身近に置き、未だに自問自答しております。最後に、河﨑一夫名誉教授の論説を紹介したいと思います。この「精神」がとても大切と思います。
医学生へ 医学を選んだ君に問う 元金沢大学附属病院長 河﨑一夫
君に問う。人前で堂々と医学を選んだ理由を言えるか? 万一「将来、経済的に社会的に恵まれそう」以外の本音の理由が想起できないなら、君はダンテの「神曲」を読破せねばならない。それが出来ないなら早々に転学すべきである。さらに問う。奉仕と犠牲の精神はあるか? 医師の仕事はテレビドラマのような格好のいいものではない。重症患者のため連夜の泊まりこみ、急患のため休日の予定の突然の取り消しなど日常茶飯事だ。死に至る病に泣く患者の心に君は添えるか? 君に強く求める。医師の知識不足は許されない。知識不足のまま医師になると、罪のない患者を死なす。知らない病名の診断は不可能だ。知らない治療をできるはずがない。そして自責の念がないままに「あらゆる手を尽くしましたが、残念でした」と言って恥じない。こんな医師になりたくないなら、「よく学び、よく遊び」は許されない。医学生は「よく学び、よく学び」しかないと覚悟せねばならない。最後に君に願う。医師の歓びは2つある。その1は自分の医療によって健康を回復した患者の歓びがすなわち医師の歓びである。その2は世のため人のために役立つ医学的発見の歓びである。その1の歓びは医師として当然の心構えである。これのみで満足せず、その2の歓びもぜひ体験したいという強い意志を培って欲しい。心の真の平安をもたらすのは、富でも名声でも地位でもなく、人のため世のために役立つ何事かを成し遂げたと思える時なのだ。